渡島大島は、渡島半島の西海岸から約50 km西の日本海にある火山島で、日本で最も大きい無人島とされる。1,2人が定住したことのない島で、許可がなければ上陸できない。3,41741年の噴火では山体が崩壊し、北海道と津軽の沿岸を大津波が襲った。気象庁の記録では、死者は1,467名、流出家屋は791棟である。51928年には「オオミズナギドリ繁殖地」として天然記念物に指定された。6
大島(オオシマ)

基本情報
| 名称 | |
|---|---|
| 場所 | 北海道 松前町 |
| 人口 | 0人 |
| 面積 | 9.74 km²9 |
| 最高標高 | 731 m(江良岳)10 |
| 座標 | 北緯 41.51174、東経 139.35903 |
| アクセス | 上陸規制あり |
位置
国土地理院国土地理院 / 海岸線:VMAP0
自然・地理
- 渡島大島は、渡島半島の西海岸から約50 km西の日本海にある、玄武岩〜安山岩質の成層火山である。海底からの高さは約2,300 mで、島の大きさは東西約4 km、南北約3.5 kmである。1国土地理院の表では「大島」の名で掲載され、面積は9.74 km²である。11最高点は江良岳で、その標高は2026年3月31日、三角点の改測によって732 mから731 mに改められた。12,1
- 渡島大島の火山活動は、東山・西山・中央火口丘の3つのステージに分けられる。中央火口丘は1741年以降の噴出物でできていると考えられており、弱い噴気孔がある。1気象庁は渡島大島を活火山として『日本活火山総覧』に収録している。8
- 1936年の水路誌によれば、大島は小島の西北西約39 kmにあり、行政上は対岸の大島村に属する「略楕圓形ノ熄火山」、つまり活動を終えたほぼ楕円形の火山である。東西は約3.7 kmで、島岸に屈曲がなく、四周は急に深くなり、沖に離れた危険物はない。島上は西部を除いておおむね雑草に覆われ、島頂は少し東に偏った円錐形をなす。島頂の北西の1峰には噴火口があり、その周りに褐色の焼石が堆積している。夏季には噴火口の岩の隙間から、今なお白煙が少し漏れ出るのが見えるという。13
- 1741年の噴火は、8月18日に西山から始まり、火砕物の降下、岩屑なだれ、溶岩流が続いた。降灰によって江差は昼も暗くなり、29日に大津波が起きた。噴火は1742年にも続き、1741〜42年の総噴出物量は0.11 km³、山体崩壊量は2.4 km³とされる。これらの日付は西暦である。5
- 大森房吉『日本噴火志 上編』の第五十五表「渡島國大島噴火」は、古い記録を年月日ごとに並べている。最初の行は旧暦の1741年7月13日で、表の西暦欄では8月23日に当たる。この行には、『北海道志』の「熊石海嘯ノ時大島ノ山噴火シ灰降リ松前昼闇キコト夜ノ如シ」という記述のほか、次の記録が挙げられている。松前郡ネブタ村から爾志郡熊石村に至る海岸の津波で家屋が流失し、溺死千余人とする記録、7月13日に大島が燃え、15日まで昼も暗く、18日の夜に高さ約90 mの津波があったとする記録、そして14・15日は昼夜の区別がつかず、18日の暁に60 m余りの津波で人家20余軒が流されたとする『続日本王代一覧』の記録である。表は続いて、同年の旧暦12月、西暦では1742年1月に松前の平地に灰が9 cm余り降ったこと、1742年の旧暦4月、西暦では5月に赤白の毛の混じった灰が降り、大島の噴火かとしたことを載せる。14噴火の始まりを、気象庁は1741年8月18日とし、この表の古記録は旧暦7月13日(西暦8月23日)とする。津波の日を、気象庁は旧暦7月19日早朝とし、表の古記録は18日の夜または18日の暁とする。5,14
- 津波の原因について、気象庁の記録は、この噴火の経過を「マグマ噴火→山体崩壊→マグマ噴火」としている。5一方、相田(1985)は、山体の崩壊だけを仮定して計算した津波の高さが、実際の記録の1/3〜1/4にとどまることを示した。15どの史料にも地震の記録は見当たらないとされる。16
- 天然記念物「オオミズナギドリ繁殖地」は、北限の繁殖地として指定されたとされる。2小城・笠(2001)によれば、渡島大島でのオオミズナギドリの繁殖は東風泊(やませどまり)の一部に限られ、1968年以降は捕獲が止まっても数が回復していない。渡島大島には1938年に、渡島小島からの7頭と江良からの6頭、計13頭のアナウサギが放たれた。ドブネズミは、江戸時代に難破した北前船から入ったと考えられている。17
- 2021年7月30日の調査では、貝類15種と甲虫22種が確認された。このうち貝類8種と甲虫7種は、渡島大島で初めての記録だった。18
- 渡島大島は、1968年5月15日に松前矢越道立自然公園の第1種特別地域に、2003年9月30日に北海道指定鳥獣保護区の特別保護地区になっている。19国指定の鳥獣保護区ではない。20
島のいろいろ
- 1741年の津波の被害の数は、資料によって異なる。気象庁は、北海道と津軽で死者1,467名、流出家屋791棟とする。5羽鳥(1979)が『松前町史』から引く『福山秘府』の松前藩の報告では、松前から熊石までの約120 kmで、溺死1,236人と他国の者の僧俗231人、流失家屋729軒、潰家33軒、破船1,521艘とされる。21江差村では、当時357戸のうち120人が水死したという記録がある。22松前町建石の無縁堂には供養碑があり、その裏面には「寛保元年辛酉七月十九日」と刻まれている。16
- 気象庁の資料では、渡島大島の人口は「なし」とされる。4渡島大島は人が定住したことのない島とされ、明治期の地理書も、大島と小島はいずれも火山島で住む人はなく、漁夫が出漁してくるだけと記している。3,23
- 島名は、国土地理院の地名・面積の表では「大島」、気象庁では「渡島大島」とされる。11,8島内には、江良岳・清部岳・寛保岳のほか、北風泊(あいどまり)、東風泊(やませどまり)、トリカラスノ浜などの地名がある。17
- 2024年8月9日時点の、政府が現に保全・管理を行っている国境離島473島の一覧では、渡島大島は20番で、概略位置は「大島(松前大島)」とされる。24周りの小島のうち、難波岬南小島は2014年に、トド岬西小島・西小島・北西小島は2012年に、政府が地図・海図に載せる名前を決めた離島であり、いずれも国境離島の一覧に掲載されている。25,26,24
アクセス
年表
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1741(寛保元)-08-18 | 西山から噴火が始まる5 |
| 1741(寛保元)-08-29 | 大津波(旧暦7月19日早朝)。浸水高は6〜8 m、局所的には最大約15 mと推定されている5,16 |
| 1742(寛保2) | 1月22日、2月8〜24日、5月18日に噴火したと推定される5 |
| 1759(宝暦9)-08-19 | 中央火口丘から噴火、青森で降灰5 |
| 1786(天明6) | この頃、常に噴煙5 |
| 1790(寛政2)-06-02頃 | 噴煙活動が活発になる5 |
| 1905〜1920 | 函館の毛皮商人が羽毛を得るためオオミズナギドリを大量に捕獲17 |
| 1921〜1967 | 江良の漁民がワカメ採取の間の食料として捕獲。推定30〜41万羽17 |
| 1928(昭和3)-03-24 | 天然記念物「オオミズナギドリ繁殖地」に指定6 |
| 1928 | 難破事故の後、北風泊の避難小屋に米を備える「救助米」制度ができる(1970年まで)17 |
| 1933 | 江良の6戸13名が1年間島で暮らす17 |
| 1938 | アナウサギ13頭が放たれる17 |
| 1956 | 北風泊一帯で山火事17 |
| 1968-05-15 | 松前矢越道立自然公園の第1種特別地域に指定19 |
| 1990 | トリカラスノ浜で避難港の建設が始まる17 |
| 2003-09-30 | 北海道指定鳥獣保護区の特別保護地区に指定19 |
| 2026-03-31 | 江良岳の標高を732 mから731 mに改定12 |
注
- 1 気象庁『日本活火山総覧(第4版)20 渡島大島』、2013年、317頁。
- 2 環境省『生物多様性の観点から重要度の高い海域(沿岸域)22801 渡島大島』。
- 3 圓谷昂史・水島未記・堀繁久・鈴木あすみ「北海道渡島大島における自然環境調査(『北海道博物館研究紀要』第7号 pp.67–82)」、2022年、68頁。
- 4 気象庁『日本活火山総覧(第4版)20 渡島大島』、2013年、325頁。
- 5 気象庁『日本活火山総覧(第4版)20 渡島大島』、2013年、321頁。
- 6 文化庁『文化遺産オンライン「オオミズナギドリ繁殖地」』、1928年。
- 7 国土地理院『電子国土基本図(地名情報)自然地名(国土地理院ベクトルタイル提供実験 experimental_nnfpt)』、2017年。
- 8 気象庁『日本活火山総覧(第4版)20 渡島大島』、2013年。
- 9 国土地理院『令和8年全国都道府県市区町村別面積調(4月1日時点)付3 島面積』、2026年(2026年の値)。
- 10 国土地理院『日本の山岳標高 更新履歴(令和8年3月31日更新)』、2026年(2026年の値)。
- 11 国土地理院『令和8年全国都道府県市区町村別面積調(4月1日時点)付3 島面積』、2026年、82頁。
- 12 国土地理院『日本の山岳標高 更新履歴(令和8年3月31日更新)』、2026年。
- 13 水路部『北海道本島沿岸水路誌(書誌第3號A)』、1936年、177頁。
- 14 大森房吉『日本噴火志 上編(震災予防調査会報告 第86号)』、233頁。
- 15 相田勇「噴火により発生する津波の見積り:1741年渡島大島の場合」、1985年。
- 16 羽鳥徳太郎「北海道渡島大島津波(1741年)の供養碑」、1979年。
- 17 小城春雄・笠康三郎「渡島大島におけるオオミズナギドリ繁殖個体群の現状と保全への指針」、2001年。
- 18 圓谷昂史・水島未記・堀繁久・鈴木あすみ「北海道渡島大島における自然環境調査(『北海道博物館研究紀要』第7号 pp.67–82)」、2022年。
- 19 圓谷昂史・水島未記・堀繁久・鈴木あすみ「北海道渡島大島における自然環境調査(『北海道博物館研究紀要』第7号 pp.67–82)」、2022年、67頁。
- 20 環境省『国指定鳥獣保護区一覧(令和7年11月1日現在)』、2025年。
- 21 羽鳥徳太郎「北海道渡島大島津波(1741年)の供養碑」、1979年、344頁。
- 22 羽鳥徳太郎「北海道渡島大島津波(1741年)の供養碑」、1979年、346頁。
- 23 加藤房蔵『北海道地理』、1893年、デジタル版32コマ。
- 24 内閣府 総合海洋政策推進事務局『我が国が現に保全・管理を行っている国境離島473島の一覧(令和6年8月9日時点)』、2024年。
- 25 内閣府 総合海洋政策推進事務局『領海の外縁を根拠付ける離島の地図及び海図に記載する名称の決定』、2014年。
- 26 内閣府 総合海洋政策推進事務局(総合海洋政策本部)『排他的経済水域(EEZ)外縁を根拠付ける離島の地図・海図に記載する名称の決定』、2012年。
参考文献
- 気象庁『日本活火山総覧(第4版)20 渡島大島』、2013年。
- 環境省『生物多様性の観点から重要度の高い海域(沿岸域)22801 渡島大島』。
- 圓谷昂史・水島未記・堀繁久・鈴木あすみ「北海道渡島大島における自然環境調査(『北海道博物館研究紀要』第7号 pp.67–82)」北海道博物館、2022年。
- 文化庁『文化遺産オンライン「オオミズナギドリ繁殖地」』、1928年。
- 国土地理院『電子国土基本図(地名情報)自然地名(国土地理院ベクトルタイル提供実験 experimental_nnfpt)』、2017年。
- 国土地理院『令和8年全国都道府県市区町村別面積調(4月1日時点)付3 島面積』、2026年。
- 国土地理院『日本の山岳標高 更新履歴(令和8年3月31日更新)』、2026年。
- 水路部『北海道本島沿岸水路誌(書誌第3號A)』、1936年。
- 大森房吉『日本噴火志 上編(震災予防調査会報告 第86号)』震災予防調査会。
- 相田勇「噴火により発生する津波の見積り:1741年渡島大島の場合」東京大学地震研究所、1985年。
- 羽鳥徳太郎「北海道渡島大島津波(1741年)の供養碑」東京大学地震研究所、1979年。
- 小城春雄・笠康三郎「渡島大島におけるオオミズナギドリ繁殖個体群の現状と保全への指針」北海道大学、2001年。
- 環境省『国指定鳥獣保護区一覧(令和7年11月1日現在)』、2025年。
- 加藤房蔵『北海道地理』大倉書店、1893年。
- 内閣府 総合海洋政策推進事務局『我が国が現に保全・管理を行っている国境離島473島の一覧(令和6年8月9日時点)』内閣府、2024年。
- 内閣府 総合海洋政策推進事務局『領海の外縁を根拠付ける離島の地図及び海図に記載する名称の決定』内閣府、2014年。
- 内閣府 総合海洋政策推進事務局(総合海洋政策本部)『排他的経済水域(EEZ)外縁を根拠付ける離島の地図・海図に記載する名称の決定』内閣府、2012年。
- 国土地理院『地理院タイル「全国最新写真(シームレス)」(seamlessphoto)』。