帽子岩は、網走港の内港の北の隅にある方形の岩である。1936年の水路誌はこの岩を「渡良岩(ワタラ)〔シャッポ岩〕」と記し、高さを27 mとしている。1網走の地名とこの岩の関係は、資料によって説明が異なる。土木学会の解説シートによれば、網走の地名は、アイヌ語の「アパシリ」、もとは幣場(ぬさば)のある島を意味する「チバシリ」から来ているといわれる。同シートは、網走港のシンボルである渡良岩、通称帽子岩が古くは「カムイ・ワタラ(神・岩)」と呼ばれ、網走の地名の元になった岩だとしている。2一方、1891年の永田方正の地名解は、海中に立つこの岩を「アバシリ」と呼ぶのは誤りだとしている。3帽子岩では、安山岩の天然の岩盤を掘り込み、防波堤などに使う箱形のコンクリート構造物であるケーソンを製作するためのドライドックが1923年ごろに完成した。このドックは、2006年度に土木学会の選奨土木遺産に選ばれた。2
帽子岩(ボウシイワ)

基本情報
| 名称 | |
|---|---|
| 場所 | 北海道 網走市 |
| 人口 | 0人 |
| 最高標高 | 27 m(岩の頂(西端))6 |
| 座標 | 北緯 44.02696、東経 144.28291 |
| アクセス | 不明 |
位置
国土地理院国土地理院 / 海岸線:VMAP0
自然・地理
島のいろいろ
- 1936年の水路誌によれば、網走港の東防波堤は渡良岩から南東へ、西防波堤は渡良岩から南西・西へ延びている。渡良岩の平らな面を利用し、その一部を掘り下げたドックは「渡良岩乾渠」と呼ばれ、修築工事中に「函塊」の製造と進水に使われた。1
- 土木学会の解説シートによれば、ケーソンドックは天然の岩盤を掘削して壁面に使ったドライドックで、完成当時の大きさは長さ56 m・幅15 m・深さ6 mであった。ドックは改造を経て解説シートの作成時点でも使われており、網走港と斜里町のウトロ漁港のケーソンを450函あまり製作してきた。2ドックの使用について、1936年の水路誌は使っていないとし、解説シートは現在も使用しているとしており、両者は書かれた時点の状況が異なる。1,2
- この岩の名前を、1936年の水路誌は「渡良岩(ワタラ)」「シャッポ岩」と書き、土木学会は「渡良岩(ワタラ岩、通称:帽子岩)」「カムイ・ワタラ(神・岩)」と書く。1,2
- 1891年の永田方正『北海道蝦夷語地名解』は、網走の元の名「チパシリ」を「我等が見付けたる岩」の意とし、次のように記している。昔、アバシリ沼、すなわち網走湖の岸に、笠をかぶって立つアイヌのような白い立岩があった。アイヌがこれを見つけて「チパシリ」と名付け、神として崇めたが、この白い岩は崩れて今は無いという。7そのうえで同書は、網走村の、岩を意味する「ワタラ」の項で、アバシリの海中に立つ岩を指して「アバシリ」と言うのは誤りだとしている。31939年の札幌鉄道局『駅名の起源』も、網走駅の名の由来を、昔網走湖岸にあった、笠をかぶって立つ人に似た白い立岩としている。8
伝承
- 永田方正の地名解は、網走の名の由来について、網走湖岸の白い立岩の神が自ら「チパシリ、チパシリ」と歌って舞ったからとも、「チパシリ」と鳴いて飛ぶ鳥がいたからとも伝えられるとし、アイヌの口伝えの伝承である口碑には大同小異があると記している。3
年表
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1891(明治24) | 永田方正の地名解が、海中の岩を「アバシリ」と呼ぶのは誤りと記す3 |
| 1919(大正8) | 網走港の修築工事が起工2 |
| 1922(大正11)ごろ | 帽子岩にケーソン製作用のドックとコンクリート製造の分工場を設ける工事2 |
| 1923(大正12)-11ごろ | 帽子岩ケーソンドックが完成2 |
| 1936(昭和11) | 水路誌は、渡良岩乾渠(ドック)を修築工事中の函塊(ケーソン)の製造と進水に使ったが、現在は使っていないとする1 |
| 1973・1980・1986(昭和48・55・61) | ドックの小規模な改良2 |
| 1989(平成元) | ドックを改造2 |
| 2006(平成18)年度 | 網走港帽子岩ケーソンドックが土木学会選奨土木遺産に2 |
注
- 1 水路部『北海道本島沿岸水路誌(書誌第3號A)』、1936年、100頁。
- 2 土木学会 選奨土木遺産選考委員会(本文の出典:大野元「網走港帽子岩ケーソンドック」土木学会誌93-2 pp.70-71 2008)「網走港帽子岩ケーソンドックの解説シート(土木学会 選奨土木遺産 2006年)」、2008年。
- 3 永田方正『北海道蝦夷語地名解 第1-3篇』、1891年、94頁。
- 4 国土地理院『電子国土基本図(地名情報)自然地名(国土地理院ベクトルタイル提供実験 experimental_nnfpt)』、2017年。
- 5 水路部『北海道本島沿岸水路誌(書誌第3號A)』、1936年。
- 6 水路部『北海道本島沿岸水路誌(書誌第3號A)』、1936年(1936年の値)。
- 7 永田方正『北海道蝦夷語地名解 第1-3篇』、1891年、93頁。
- 8 札幌鉄道局 編『駅名の起源』、1939年、デジタル版62コマ。
参考文献
- 水路部『北海道本島沿岸水路誌(書誌第3號A)』、1936年。
- 土木学会 選奨土木遺産選考委員会(本文の出典:大野元「網走港帽子岩ケーソンドック」土木学会誌93-2 pp.70-71 2008)「網走港帽子岩ケーソンドックの解説シート(土木学会 選奨土木遺産 2006年)」土木学会、2008年。
- 永田方正『北海道蝦夷語地名解 第1-3篇』北海道庁、1891年。
- 国土地理院『電子国土基本図(地名情報)自然地名(国土地理院ベクトルタイル提供実験 experimental_nnfpt)』、2017年。
- 札幌鉄道局 編『駅名の起源』北疆民族研究会、1939年。
- 国土地理院『地理院タイル「全国最新写真(シームレス)」(seamlessphoto)』。